研究科長挨拶

人文学・社会科学:複眼的な視点

多くの人は自分のフィルターを通して物事を理解したり、現実世界を捉えたりします。でも、自分と異なるものの見方や考え方に触れると、「確かにそう(も)見える」というふうに新たな発見につながります。いつもの見慣れた景色でも、視点を替えてみるだけで、それまでと全く違う景色に映ることもあります。一筆で描く円の形は、見ようによってはただの○(まる)かもしれませんが、見る人が見ればすぐに円相だとわかるでしょう。ちまたに情報が溢れる時代だからこそ、物事を複眼的に視る力を本学大学院で培ってみてはいかがでしょうか。

世の中の変化を映し出す鏡のように、人文学(Humanities)と社会科学(Social Sciences)を構成する分野・領域の専門化と細分化が進んでいます。その一方で、学術研究の学際化が進展し、学際融合的な視点や枠組みでアプローチすることの重要性も説かれます。当研究科の特徴は、大学院人文社会科学研究科(Graduate School of Humanities and Social Sciences)という一つ屋根の下に人文社会科学の各分野・領域を専門とする研究者(=教員スタッフ)を多数擁していることです。一人ひとりを個々別々に見てみると、特定のテーマを徹底的に掘り下げて人間本性の問題や社会構想に迫る人もいれば、分野・領域横断的で学際的なアプローチを強みとする人や研究成果を基に社会実装を指向する人もいます。つまり、人文・社会科学を学び修めたい方の疑問や研究上の問い(リサーチクエスチョン)に応える態勢が本研究科には整っているといえます。

埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程には、文化環境専攻、国際日本アジア専攻、経済経営専攻の3専攻があります。文化環境専攻は、哲学、歴史学、文学などの人文学領域と、国際関係論、社会学、人類学、地理学などの社会科学領域を中心とする専攻課程です。国際日本アジア専攻は、日本とアジアの文化、社会、歴史、経済、経営、法律等について総合的・国際的な視野から研究を行うために設置された専攻課程です。経済経営専攻は、経済・経営・会計・法律・行政などの分野から構成され、社会人のための平日夜間・土曜開講を特徴としています。また、同研究科博士後期課程には日本アジア文化専攻と経済経営専攻の2専攻があり、それぞれの分野における高度専門職業人と博士学位を有する社会人や研究者の育成を目的としています。

また、皆様お一人おひとりの学びの目的に対応したプログラムを用意しています。国際日本アジア専攻日本アジア経済経営コース及び経済経営専攻課程では、修士論文を作成するプログラムのほか、コースワークによって経済学・経営学の専門知識修得を目指す「課題研究プログラム」を置いています。また、経済経営専攻課程では、本研究科後期課程への進学と博士号取得を目指す「インテンシブ・プログラム」があります。さらに、すべての授業と論文指導を英語で行う博士前期課程のMAプログラム(修士《学術》)とMEconプログラム(修士《経済学》)、博士後期課程経済経営専攻のDEconプログラムがあり、海外から本研究科で学びたい方々の要望に応えてきています。

日本国内の大学等の卒業生だけでなく、さまざまな国からの留学生や現役社会人など多様な価値観やバックグラウンドを持つ人が本研究科に籍を置いて切磋琢磨しながら研究に取り組んでいます。大学院教員スタッフも各人の研究テーマを日々深化・発展させ、その成果を活かしながら皆様方の研究をサポートする環境を整えています。皆様方と「探求の場」を本研究科で分かち合えることを楽しみにしています。

 
埼玉大学大学院 人文社会科学研究科長 水村 典弘

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